--  鶴岡の家  --

 

 

山形県鶴岡市。豪雪地帯とまでは言えませんが、時に積雪は1m近くになり、北西から日本海の強風が吹き付けます。そんな中でも固く閉じこもることなく、広く明るく伸びやかな生活を実現しようとしました。

プログラムの複雑さが、もう一つの特徴です。第一に、父方母方それぞれの祖父・祖母が同居します。幸い祖父母同士は仲が良く、一体の親ゾーン(Pエリア)とすることができましたが、その他にも祖母も父も母も長男もユニークな個室を必要とし、サンルーム・東屋を含めて多種多様なスペースを、一つの建築の中に盛り込む必要がありました。そこで諸室の配列が混乱を来さぬよう、まずは全体の中心に親子三人の母屋を置きます。その南方にPエリアと東屋というふたつの方形屋根を配して、母屋とのつなぎのスペースをそれぞれエントランスとします。こうして、母屋を核としたコの字形の明快な構成とすることができました。

 ただ敷地は東西40m近くもあり、ただのコの字だけでは締まりと一体感に欠けます。そこで敷地幅一杯に、真っ白いフレームを貫通させました。これは玄関前のポーチともなるし、全体に一本筋を通して緊密感を生み出す背骨ともなります。また各部からチラリと見えることで、中心軸の存在が意識され、各室がその周りに明確に定位されてくるはずだと考えました。こうした構成を突き破るようにコの字からは、南に向かってウッドデッキとサンルームが突出します。内部に閉じこもっていても、視線が外に伸びてゆけば、心はゆったりと開いていくのではないかと思ってのことです。幸い敷地の先には大きな公園が拡がっており、ウッドデッキ廻りの植栽が茂ってくれば公園の緑と一体になって、より大きな伸びやかさが得られることでしょう。

 

 


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所 在 地 山形県鶴岡市
構造規模 在来木造
設  計 榎本弘之建築研究所
構造設計 エムジービー工藤道明
敷地面積 936.86m2
建築面積 292.90m2
延床面積 353.78m2
施  工

ASJ庄内スタジオ加藤組

設計期間 2016.08 - 2017.08
施工期間 2018.01 - 2019.05

(C)株式会社 榎本弘之建築研究所