--   河津M邸  --

 

海に向かって一直線に伸びる50mの壁と、図面上側の竹林・図面下側の谷に向かうフレームによって、空間が周囲の自然の中へと膨張してゆく力を与え、
擁壁を兼ねる大きな円弧の壁で、生活の領域を自然から切り取る凝縮的な求心力を実現したいと構想しました。
心は四方の自然の中へ拡がってゆきたいが、身は安らかに護られたいという願望が、解放性と閉鎖性の関係として、
構成の中心となったのです。

「別荘というものは、老後は別として、せいぜい月に二三度しか行けないところです。けれど東京の喧噪の中でふとした瞬間に、ああまた週末にはあそこへ行ってほっとできる、そんな夢を持ちたいからこそ、別荘を作りたいと思うんです」 最初にオーナーからこの言葉を聞きました。こういう夢を一緒になって膨らませられることが、設計の最大の喜びです。

 


<<<back 


(C)株式会社 榎本弘之建築研究所