作品への想い-2

広く明るく伸びやかに

 建築を直接的に取り巻く雑多なものたち----コストや法規・敷地条件・近隣・工法・施主の要望からエコロジーまで----それらは生憎なことに、ことごとく相反する。広くしたいが金がない、明るくしたいがビルの谷間で、ゆったり住みたいが隣家の視線が気になる、けれど夢ばかりは大きく膨らんでしまう、、、それらを上手く調停するのが建築家の仕事とさえ言われそうな状況である。特に日本は敷地は狭く法規は厳しく工事単価は高過ぎて、建築家受難の時代である。
 とはいえやはり気持ちよく住んでもらいたい。狭い敷地に少ないコストでも、いきいき暮らしてもらいたい。アイデアと工夫でなんとか厳しい条件を乗り越え、更には爽やかな感動を覚えるほどの建築が出来るのではないかと、様々な可能性に取り組んできた。決して高尚な論理の展開にはならないが、それが建築家の一つの大きな社会的使命だと思っているし、こんなところにこんなびっくりするような空間が出来てしまうのかというのが、建築の面白いところでもあるからだ。

 やはり最大のコンフリクトは、広さに関するものである。しかし何も実際に広い必要はない。中で大パーティを開く訳でもあるまいし、広々と《感じ》られればよいのである。ゆったりとした《感覚》が得られればよいのだ。そのためにずっと取り組んできた方法の一つが、内外の一体化である。10帖の部屋でも10帖のテラスと一体化させれば、部屋はテラスを通して空まで拡がり、20帖以上の拡がりが感じられる。テラスは床だけだからコストも低く法規も緩い。しかしそのためには材料やディテール、各部の関係性も重要であり、ただ単にテラスがあればよいと言うものではないのである。

これまで試みてきた方法としては、まず内外の一体化を目指して
  1、壁・天井・床スラブの延伸・
  2、面の分離・ずらし・ギャップ
  3、浮遊する屋根
  4、敷地全体の拡がりを感じるために
とまとめられる手法群がある。また
  5、鏡の効果
も、拡がり感を求めてのものである。  
内外の一体化を拡張する中からは
  6、外のヘヤ・内のニワ
という概念が生まれている。さらに外観においては
  7、フォルム自体の伸びやかさ
という形で、広く明るく伸びやかに住まいたいという願望を作品に込めてきた。各作品の写真から実際の空間を想像し、それらを感じていただければ幸いである。

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